布袋寅泰が導く新時代の音楽教育とは?デジタル特化型音楽専門校「バンタンミュージックアカデミー POWERED BY ユニバーサルミュージック」開校

近年の世界の音楽市場は、Spotify、Apple Musicなどのストリーミングサービスの普及など、テクノロジーの進化とともに急成長しています。日本も例にもれず、世界音楽市場ランキングではここ10年以上にわたり、アメリカに次いで世界第2位を維持。今後もますますの成長が期待されています。 こうした時代背景の中、これから音楽業界に求められるのは、新たなマーケティングや技術革新に対応するスキルといえるでしょう。

そこで、クリエイティブ分野の専門教育を手がける株式会社バンタン(以下、バンタン)は、ユニバーサルミュージック合同会社(以下、ユニバーサルミュージック)と提携。デジタルに特化した新たな音楽専門校「バンタンミュージックアカデミー POWERED BY ユニバーサルミュージック(以下、バンタンミュージックアカデミー)」を2026年4月に開校します。

先日は都内で『VANTAN MUSIC ACADEMY 開校PRイベント』が行われ、開校の経緯やカリキュラム、長期ビジョンについての詳細が発表されました。さらに、当校の特別顧問に就任した世界的アーティストの布袋寅泰氏が登壇。2026年入学を検討する学生に向けた特別授業を行いました。

ビジョンは「世界で一番、社会に近いスクールを創る」

株式会社KADOKAWA 取締役代表執行役社長CEO 学校法人角川ドワンゴ学園理事 夏野剛氏

株式会社KADOKAWA(以下、KADOKAWA)グループが展開するバンタンは、同社の教育事業の中で中心を担うクリエイティブ専門校です。同グループは他にもオンライン高校の「S校」「N校」なども手がけており、テクノロジーを活用したエドテック事業に注力しています。

「バンタンは、ゲーム、アニメ、ファッション、ヘアメイクなど、エンターテインメント分野に特化した『世界で一番社会に近いスクール』をビジョンに人材育成を行う専門校。今年で開校60周年を迎えます」

取締役代表執行役社長CEOの夏野氏はこう切り出すと、続けて日本の音楽市場の現状をふまえた上で「バンタンミュージックアカデミー」開校の背景を語ります。

「現在はダウンロードやストリーミング、動画再生など、音楽の楽しみ方が変化しています。またパソコンで作曲・編曲が行えるDAWソフト等の普及で、誰でも楽曲を制作・配信できる時代になりました。と同時に、アーティストが長期的に活躍できる時代がすでに到来しているともいえます。ストリーミング配信が追い風となっている今、デジタルスキルを身につける人材を育成することが、音楽業界の活性化にも非常に重要になってきていると考えています」

またもうひとつの背景として、現在社会問題となっている不登校問題を挙げ、「バンタンミュージックアカデミー」の取り組みについて次のように続けます。

「不登校の直接的な要因は、“無気力”“不安”。しかしその原因は個人ではなく環境にあると考えます。そのためには、多様な個性を尊重し、好きなことに挑戦できる環境を整備することが不可欠。時代のニーズにこたえた『バンタンミュージックアカデミー』は、通学せずに自分のペースで通いたい方を含め、多様な個性を受け入れる『世界で一番社会に近いスクール』として、音楽人材の養成を目指していきたいと思います」

特別顧問に布袋寅泰氏が就任

特別顧問 布袋寅泰氏

ここで「バンタンミュージックアカデミー」の特別顧問に就任した世界的アーティストの布袋寅泰氏が登壇。伝説のロックバンド「BOØWY」を経て、現在はロンドンを拠点にソロギタリストとして活躍中です。

代表的な楽曲のひとつである映画『新・仁義なき戦い』のテーマが映画『キルビル』のメインテーマとして世界的に注目され、評価を高めた布袋氏。新時代の音楽業界について、こう見解を述べます。

「現在、音楽、楽曲制作にはテクノロジーは欠かせない時代。誰もが同じツールで0からものを作れるという意味では、アーティストは全員ライバルですからね。なかなか厳しい時代だとは思います。果たしてAIで作った音楽にはファンができるのか、など、まだ先は見えない部分だけど興味深いですね。新しい世代の皆さんは、そんなことを課題にしながらクリエーションをしていくんだろうから、注目度は非常に高い。自身も勉強したいなと思いますね」

そして布袋氏はこれまでの自身の経験をふまえた上で、将来の展望を語ります。

「僕は10代のころから“自分のシルエットを見ただけでサウンドが聞こえてくるような、そんなギタリストになりたい”と偉そうなこと言っていましたけど、結果的にそうなっているんじゃないかな。でも、まだゴールにはほど遠いと思います。もっと自分を磨いていきたいし、プロセスを楽しみたい。そのために、いろんな経験をするのが大切なのかなと思うんですよね」

布袋氏による特別授業

2026年入学検討者に向けた特別授業

布袋氏はこの日、会場に集まった2026年の入学検討者に向けて質疑応答の形で特別授業を行いました。

――親にミュージシャンをめを目指すと言いづらくて……。布袋さんは音楽の道を選ぶとき、ご家族や周囲の反応はどうでしたか。

「先が見えない職業でもあるし、親御さんからすると、君にどんな才能があるかなんて見えないから心配だと思うんですよね。僕の親も『やめておきなさい』と言い続けていました。でも初めての武道館でやった時に楽屋に来て、『あなたならできると思いましたよ』って(笑)。でもね、まだ形にはなってないかもしれないけど、曲やライブとかがあったら親御さんにちょっと聞いてよって聞かせると、1番のファンになってくれるかもしれないですよね」(以下、布袋氏)

――音楽をやめようとした時はありますか。そのような時、どう乗り越えてきましたか。

「やめようと絶望的になったことはないですね。ソロになって、なかなか自分のやりたいことが伝わらない、伝えられない時に葛藤した時期はありましたけど。でも、その悔しさやもどかしさは武器になる。『僕にはこれしかないからやめるわけにはいかない』。これを続ける理由にするんです。失敗する勇気も必要ですよ」

――日本の音楽を世界に広めるために、今足りないものはなんだと思いますか。

「今は、YouTubeなどで自分の音楽を作ることができる時代。奇をてらわず自分が好きだと思える音楽を探すことがまず初めじゃないかな、と思います。外国の人たちも日本文化に興味を持っているし、言葉やスタイルを超えた音楽が通じるっていうのは世界で活躍している日本のアーティストが証明しているから、次のチャンスは君に向かっているんじゃないですか。

――音楽業界を目指すことに不安を感じてしまう瞬間があります。布袋さんはそう思うことはありますか。

「不安ね、そりゃそうですよね、人間ですから。でも音楽は、いろいろな役割を持った人たちと支え合いながら作っていくものと思います。その上で、スクールの仲間は大事だと思います。仲間の作品を聞いたり、アプローチを見たりしながら“こういう考え方もあるんだ”と、それぞれ高め合って不安を乗り越えられたら、このスクールの意義があるんじゃないかなと思います。みんな不安になりますから、そのことを不安に思わない方がいいと思いますよ」

布袋氏は質問に真摯に向き合い、最後には質問者ひとりひとりに「がんばって」と、新時代の音楽業界を担う若者たちを鼓舞しました。

ユニバーサルミュージックと提携

ユニバーサルミュージック合同会社 社長兼最高経営責任者(CEO) 藤倉尚氏

ユニバーサルミュージックは、世界最大級の音楽企業「UNIVERSAL MUSIC GROUP」の日本法人で、音楽レーベル事業やライブ・イベント制作といった様々なサービスを通じ、アーティストとファンを繋げる事業を展開しています。

「バンタンミュージックアカデミー」は、そんなエンターテインメント分野をリードするユニバーサルミュージックの全面協力のもと、2026年4月に開校します。日本の名だたるアーティストが所属する同社がバンタンとの提携に至った背景について語るのは、社長兼最高経営責任者(CEO)の藤倉尚氏です。

「デジタル化やグローバル化、多様化など、環境の変化がめまぐるしい音楽業界は、求められるアーティストやスタッフ像もどんどん変わってきています。特に昨今のSNS社会においてはセルフプロデュース能力も問われるなど、音楽が好きで音楽を一緒に作ること以外のプラスアルファも必要になってくるなと感じています。こうした背景から、時代の音楽業界が担う人材育成は、日本の音楽業界全体の課題といえます。ところが弊社では、その教育に関わるノウハウなどにかける時間が不足しているのが現状です。そんな折に『バンタンミュージックアカデミー』開校のお話をいただき、このような音楽スクールをユニバーサルミュージック全体でぜひサポートさせてもらいたいと思いました」

そして藤倉氏は、「バンタンミュージックアカデミー」に対して期待の言葉を寄せます。

「今後 『バンタンミュージックアカデミー』からひとりでも多くの“ファンに選ばれる人材”、“アーティストに選ばれる人材”が輩出され、世の中にワクワクや希望を与えてくれることを願ってやみません」

音楽を学びながら高卒・大卒資格も取得

株式会社バンタン代表取締役社長 木村良輔氏

バンタンで代表取締役社長をつとめる木村良輔氏は、「バンタンミュージックアカデミー」開校に向けて意気込みを語ります。 「『バンタンミュージックアカデミー』は、多種多様のカリキュラム、関連企業への現場実習など、音楽業界で活躍するための人材育成を徹底してサポート。卒業後は、アーティストやプロデューサー、宣伝担当、楽曲制作スタッフなど、多様な進路が広がっていくと思っております。また、音楽の専門スキルを学びながら、提携先の通信制大学・高校にて、大卒・高卒資格の取得も可能。将来の幅も広がります。音楽を学ぶ意欲を持つ全ての方に、自分のペースで興味を深められる、安心して挑戦できる、そんな環境を整えていきたいなと思っております

新時代における音楽教育の展望

このように「バンタンミュージックアカデミー」は、多様な個性を受け入れ、国内外で活躍できる人材を育成することを目指しています。音楽市場の成長とともに教育の在り方も進化する中で、学生たちがどのように新たな音楽シーンを切り開いていくのか、今後の展開に目が離せません。

【布袋寅泰 プロフィール】

日本のロックシーンへ大きな影響を与えた伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されている。クエンティン・タランティーノ監督からのオファーで、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANIT(新・仁義なき戦いのテーマ)」が映画『KILL BILL』のテーマ曲となり世界的にも大きな評価を受けた。同曲はロック・アンセムとして今も尚、世界で愛されている。

2012年よりイギリスへ移住。David Bowie、Roxy Music、Brian Setzer、Iggy Popなど海外アーティストとの共演も叶え、2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たした。2015年海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。その年の10月にインターナショナルアルバム『Strangers』がUK、ヨーロッパでCDリリースされた。

2021年には東京2020パラリンピック開会式にて「TSUBASA」「HIKARI」の2曲を制作・出演。圧倒的なパフォーマンスが世界中から高評価を受けた

<取材・撮影・文/櫻井れき>