自分らしさってなんだろう?小学生が“名刺づくり”で見つけたヒント

「自分だけの名刺って、どんなものだと思いますか?」
そんな問いかけから始まったのは、大人が普段使う“名刺”をテーマにした、ちょっとユニークな子ども向けのお仕事体験イベントです。しかもただ名前を書くだけではありません。自分の“得意なこと”や“好きなもの”、“どんなふうに人に伝えたいか”を考えて、それを一枚のカードに込める——まさに、自分を伝える“名刺づくり”にチャレンジする時間なのです。

主催したのは、マーケティング会社「ワンソード」。このイベントは子どもたちに、マーケティングの基本でもある「自分らしさをどう表現するか」を体験してもらうことを目的に開かれました。とはいえ、堅苦しいものではなく、参加したのは小学4年生から6年生までの子どもたち。みんな楽しみながら、自分を見つめるというちょっぴり不思議で素敵な時間を過ごしました。

最近は「自己表現の大切さ」や「自分らしさを発信する力」が注目されていますが、こうした感覚を小学生のうちから自然に体験できるのは、なんだか新しい学びのカタチのようにも思えます。しかもそこにあるのは“楽しさ”が中心。勉強や習い事とは少し違った、この“遊びと学びの間”のような空間に、ちょっとワクワクさせられました。

なぜ子どもたちに“名刺づくり”を?

このワークショップは、「自分の特徴や長所を見つけて、それを自分らしく伝えること」をテーマに、小学生を対象に開かれました。主催したのは、企業やサービスの魅力を引き出すことを専門とするマーケティング会社。普段は大人向けに仕事をしている彼らが、今度は子どもたちの「自分を伝える力」を育てる場として、名刺づくりというちょっと意外な切り口を用意したのが印象的です。

名刺といえば大人のものというイメージがありますが、そのフォーマットを借りて、自分をどう紹介するかを考えることで、子どもたちは“自分ってどんな人?”と向き合う機会を得ます。「何が得意?」「どんなことが好き?」「人にどう伝えたい?」といった問いを通して、自分らしさに気づくきっかけになったようです。

マーケティングの手法をそのまま教えるのではなく、あくまで子どもたちの感性やことばを大切にしながら、“表現すること”の面白さを体験してもらう。そのスタンスが、このワークショップを子どもたちにとって親しみやすいものにしていた印象です。

どんな体験だったの?名刺ができるまでの5ステップ

ワークショップ当日は、名刺づくりをゴールに、5つのステップを順番に体験していく流れになっていました。それぞれの工程にマーケティングのエッセンスがちりばめられ、子どもたちは楽しみながら自分の魅力と向き合っていた様子が伝わってきます。

1.ワンソードのお仕事紹介

まずは、今回のワークショップを企画したマーケティング会社「ワンソード」の仕事について紹介。普段どんなことをしている会社なのか、どんなふうに“魅力を伝える”という仕事に取り組んでいるのかを、子どもたちにもわかりやすく説明する時間が設けられました。

2.自分のキャッチコピーを考えよう

次に、自分の性格や得意なことをもとに「自分だけのキャッチコピー」を考えるパートへ。自分の魅力を短い言葉で表現するという、マーケティングにも通じる発想のワークです。「いつも笑顔のがんばり屋さん」「ひらめき名人」など、個性豊かなコピーが生まれました。

3.プロフィール写真を撮影しよう

キャッチコピーができたら、今度は名刺に使うプロフィール写真を撮影。ポーズや表情も自由で、楽しみながら“自分らしさ”を形にしていきます。普段とは少し違う、ちょっと緊張した表情もあれば、自然体の笑顔もあり、それぞれの個性がにじむ瞬間でした。

4.名刺をデザインしよう

ここで、いよいよ名刺の制作に取りかかります。自分の名前やキャッチコピー、写真を組み合わせて、テンプレートを使いながらデザイン。色使いや配置に工夫をこらしながら、ひとりひとりが思い思いの名刺を完成させていきました。

5.修了式

最後は修了式。出来上がった名刺を手に、みんなで成果を披露し合いながら、一日を締めくくりました。「自分を表現するって楽しい」「もっといろんな人に伝えてみたい」——そんな気持ちを胸に、子どもたちは名刺とともに新しい自信を持って帰路についたようです。

大人も気づかされる 子どもたちのまっすぐな発想

このワークショップには、子どもたちにとっての“学び”だけでなく、大人側にとっても新たな発見があったようです。運営に関わった大人たちは、子どもたちのまっすぐで素直な発想に触れ、あらためて「自分らしさとは何か」を考えるきっかけにもなったといいます。
「子どもが自分の言葉で語る姿に、大人のほうがドキッとさせられる」
そんな声もあったように、自分の魅力や想いをまっすぐに伝える姿は、大人が忘れかけていた表現力の本質を思い出させてくれます。

また、学校や家庭とは少し違った“第三の場所”で、自分の考えを安心して話せる環境があること。そのこと自体が、子どもたちにとって貴重な体験になっていたのではないかと感じられました。
教える側だったはずの大人たちが、気づけば子どもたちから学ぶ時間になっていた——そんな逆転のような気づきが、大人にとっても印象深いものになったようです。

自分を伝えるって、ちょっと楽しい

“名刺”という少し大人っぽいアイテムを通して、自分のことを見つめ、言葉にし、形にする——そんなプロセスの中で、子どもたちは「自分を表現する」という一歩を踏み出していました。

このワークショップが印象的なのは、難しい理屈ではなく、「楽しみながら自分のことを伝える」プロセスそのものを大切にしている点です。かたちにとらわれず、自分の気持ちや個性に目を向ける時間を持つこと。それ自体が、子どもたちにとってかけがえのない体験になっていたことが伝わってきます。

これからの時代、どんな職業に就くとしても「自分をどう伝えるか」は大切な力として求められていくはず。そうした力の土台を、遊びと学びのちょうど真ん中で育む取り組みとして、今後の広がりにも期待したくなる内容でした。