博報堂「生活者インターフェース市場フォーラム 2022 解き放たれる生活者―メタバースで生まれる新たな自由と可能性―」を開催

株式会社博報堂は、2022 年 11 月 14 日に「生活者インターフェース市場フォーラム 2022」を六本木の東京ミッドタウンで開催した。コロナ禍の影響で、オンライン開催が続いたが今年はコロナ対策を万全に行い、リアルとオンラインのハイブリット開催となった。
今回、フォーラムのテーマは「次世代インターネット空間と生活者」 特にメタバースに注目し、生活者や企業がどのように関わり、活用していくのかなど、様々分野の有識者が集い様々な観点から活発なセッションが行われた。

数十秒で“自分アバター”が完成
本フォーラム参加者に対して入場時にVRC 3Dスキャン体験により、瞬時に自分自身のアバターが生成された。このアバターは会場内のスクリーンにも登場し、自身のスマートフォンでも見る事ができた。

今回、フォーラムのテーマは「次世代インターネット空間と生活者」で、有識者による4つのセッションが行われ、どれも非常に興味深く、メタバースの可能性に心躍るフォーラムだった。

第1章のテーマは「解き放たれる生活者」次世代インターネット空間で実現する生活者エンパワーメントの世界

登壇されたのは株式会社博報堂 代表取締役社長 水島正幸氏

「メタバースが普及する事で、性別、容姿、住んでいる場所に関係なく好きな時代の好きな場所に行ける未来が訪れ、生活者同士の交流が起こり、新たな消費行動が生まれる」と話し、メタバースの普及状況については、マシュー・ボール著『ザ・メタバース』を引用してメタバースは子供たちがやっているゲームの世界ではなく、今後は生活の一部になっていく可能性について語られた。

同社の調査によると、メタバース関連サービスの認知度は全体の 36.2%、推計で約2,980万人が「メタバース」を知っているという結果に。メタバース関連サービスの経験者は全体の8.3%、推計で約680万人が、利用経験があることが判明。
また、利用世代は若年層が多く、これはイメージ通りだが、生まれた時からインターネットがあるZ世代は特に新しいサービスであるメタバースにも抵抗がなく、今後も広く普及していく事を強く感じた。

第2章のテーマは「多様な価値観と出会い、好奇心を解き放つ」メタバース空間で生まれる新たなクリエイターズエコノミー

登壇者は株式会社小学館XR事業推進室室長 嶋野智紀氏/テイフォン株式会社 CEO・C
CO 深澤研氏/博報堂DYホールディングス 木下陽介氏/DAC 荒井浩介氏

このセッションでは、メタバース空間に置いて、今後は伝えるだけのメディアではなく、ワクワクする感情を呼び起こしバーチャルとリアルを繋ぐ「次世代メディア」の可能性について説明。
「CanCam」や「AneCan」等の女性ファッション誌の編集長を歴任された株式会社小学館の嶋野智紀氏は「この服が良いと、決めつけるようなページは作らず、読者の体験設計やおすすめの場所や実際に行った際の楽しみ方を紹介。そこで、その時にはこういう服を着ていった方が良いのでは?という体験設計をもとにページを作っていた」と自身の経験を話した。
「体験設定を提供することができれば、紙媒体にこだわる必要はないのではないか。要するにユーザーの体験設計をどう作っていくのかということが重要であり、メタバースにはその可能性を感じている。」と語った。

第3章テーマは「そして、なりたい自分へ」フォトリアルアバターの可能性と未来

登壇者は株式会社VRC 代表取締役 謝英弟氏/東京大学大学院 准教授 鳴海拓志氏/博報堂 中島優人氏

このセッションではなりたい自分になれるフォトリアルアバターを通じて、一人1アバター時代が到来した時、生活者に何をもたらすのかについてのトークセッションとなった。
東京大学大学院 准教授 鳴海拓志氏の話では、メタバースは自分以外の別人や動物などになる変身と、服装や体系を変えた自分を並べるなどの分身がある、など様々な研究を行っている。
例えば、バーチャルドッペルゲンガ―と行動変容について「自分とそっくりなアバターが熱心に運動をしていると、自分も頑張ろうと思う」という効果があると説明。さらに変身で有名なプロテウス効果では「変身する事で自己イメージがアバターに引き寄せられる。筋肉質のアバターを用いてダンベルを持ち上げると軽く感じられる研究結果がある」とプロテウス効果について説明した。

第4章テーマは「リアルを拡張する」フィジカルとデジタルの融合がもたらす新たなコミュニケーション体験

登壇者はSnap Inc 日本代表 長谷川倫也氏/株式会社MESON 代表取締役CEO 小林佑樹氏/博報堂DYホールディングス 目黒慎吾氏

この第4章では、カメラの認識技術の急速な発展により「実空間」にメタバースが重なることで、「リアル」を拡張する可能性についてのトークセッションとなった。
その中でSnap Inc の長谷川倫也氏の話では「AR 技術の発展により商品購入までの流れが変わってきている。洋服やコスメティックもバーチャル体験をしてから購入をするようになってきた。もちろん、店舗に行って洋服やコスメティックを試してから購入するという流れは今でもあるが、店舗に行かなくても、いつでも、どこでも、気兼ねなく、体験(お試し)してから購入することができるようになっきた」と話した。

最後は、入場時にスキャンしたアバターによるダンス動画を投影した。

自分自身では踊ることの出来ないキレキレのダンスを自分のアバターが躍るという非常に完成度の高い動画で、筆者もワクワクしながら鑑賞することができた。
まだまだ発展途上と思っていた「メタバース」だが、「自分ではない他人になれる変身や分身」「好きな場所や好きな人と気軽にコミュニケーションができる」など、このフォーラムに参加した事でより深く理解することができた。博報堂を始め様々な先進企業が参画を表明している中、今後次世代インターネット事業としての「メタバース」の動向により一層、注目していきたい。