株式会社Hakuhodo DY Matrixは、国連が定めた国際幸福デーの2023年3月20日に「100年⽣活者研究所」を巣鴨に設立。同研究所は、⽣活者から人生100年にまつわる声を聴く「100年生活カフェ」として運営し、人生100年時代の幸せのあり方やアイデアを探索することを目的に、Well-being社会の実現を目指していくとのことです。
オープンに先立ち、「100年生活者研究所」お披露⽬説明会が行われました。
生活者との対話を通じて「人生100年時代」の幸せのあり方を考える
冒頭では100年⽣活者研究所の所長を務める大高香世さんが登壇。
Hakuhodo DY Matrixが掲げる「100年生活者を見つめ、人生を通してWell-beingであり続けられる理想社会の実現に貢献する」というミッションのもと、来たるべき人生100年時代を予見し、Well-beingな世の中を加速させるべく、今回の研究所設立に至ったそうです。
同社が人生100年時代における生活者の意識について調査を行ったところ、「100歳まで生きたいと思いますか?」という問いに対し、回答者の7割が「そう思わない」と答え、現状では人生100年時代をポジティブに捉えている人が少ないという結果が出ました。
こうしたなか、100年⽣活者研究所が目指すのは、100歳まで生きるかも知れない現実を「不安」に思うのではなく、「歳を重ねることを楽しみに思う人を増やし、“100歳まで生きたい”という意志に変えること」だと大高さんは説明しました。
また、100年⽣活者研究所の特徴として、「一般的なシンクタンクに見られるアプローチとは異なる手法をとる」と大高さんは続けます。
「クローズドな調査や研究をもとに仮説検証し、その成果をホワイトペーパーや調査リリースとして発表する従来のやり方ではなく、生活者と常に対話してアイデアを共に考えながら解決策を見出していく『リビングラボ方式』で研究を進めていきます」生活者の声を聴く場として巣鴨にオープンしたカフェは、さまざまな年代との対話を通じてアイデアのヒントや、新たな発見につなげていくのを目的に運営していくとのこと。
「生活者からのヒアリングで集まった意見をアンケートやオウンドメディアの記事、ニュースリリースとして配信していく予定です。また、月1で本格的な調査レポートを作成し、100年⽣活者研究所が取り組んでいる活動を対外的に発信していければと考えています」加えて、「初年度は2つのテーマにチャレンジしたい」と大高さんは抱負を述べました。「まずは個人に還元するトライアルとして、スマホやSNSの使い方をシニアの方にレクチャーする『デジ活シニアのサポート』を行っていきたいと考えています。そして、巣鴨の地域や商店街の方々と、さまざまな対話やワークショップを企画し、『100年生きたくなる社会の仕組み』の創出にも取り組んでいきたいですね」
鎌倉市の今泉台地域に見る「リビングラボ」の事例
次いで登壇したのは、東京⼤学名誉教授の秋⼭弘⼦さん。
産官学民の共創によって、地域の課題解決を目指すオープンイノベーションのプラットフォーム「鎌倉リビングラボ」の代表を務めています。秋山さんが、オープンイノベーションのエコシステムに興味を持ったのは、東京大学の研究機構でまちづくりに取り組んでいる過程で、「地域住民が長寿社会の課題解決につながるアイデアを多く持っていることに気づいたから」だと言います。
「企業が仮説を立て、ソリューションを考えても、的を得ずに課題解決につながらないことも少なくありません。他方、地域のあるべき姿を想像できる住民からは、次々とアイデアが浮かび、自分たちで地域をより良くしていきたいという気概が伝わってきたんです。
人生100年時代には多くの課題がある一方、逆を言えばイノベーションの宝庫であり、新たな可能性が広がっている。そう感じたので、オープンイノベーションに自分も関わりたいと思うようになりました」鎌倉リビングラボでは、鎌倉市の今泉台地域を起点に、多様な関係者を巻き込みながら、これまでさまざまなユースケースを生み出してきました。
「若年層が暮らしやすいまちづくり」の実現のために、テレワーク家具を開発したほか、地域間の移動を便利にするパーソナルモビリティ、高齢者の健康を見守るウェアラブルデバイス、独りで過ごす時間を豊かにするソーシャルロボットなどは、産官学民による共創から具現化されたものになっています。
「イノベーションを起こそうと思っても、個社だけではできることが限られます。そうではなく、産官学民それぞれのステークホルダーが互いに意見を出し合い、ディスカッションしながら、アイデアを考えていく。こうすることで、今まで見えてこなかった課題解決のアプローチやニーズの発見につながるんです。これこそ、リビングラボの良いところであり、いろんなことにチャレンジできる原動力になると考えています」(秋山さん)
シニアインフルエンサーが語る長生きの秘訣と人生を楽しむ術
続いてはシニアインフルエンサーの⼤崎博⼦さんが登場し、「パソコンやスマホを使いこなすデジタル⽣活の楽しみ⽅ 」をテーマに、大高さんとトークセッションを行いました。
健康に気をつけているポイントについて、⼤崎さんは「毎日の生活で8,000歩歩くように努力している」と答えます。「若い頃は歩くのが嫌いでしたが、健康のことを考えると、やはり歩くのが一番だと思っています。私は70歳まで仕事をやっていて、そこから毎日8,000歩を意識しながら生活を送っていますね」⼤崎さんがパソコンやスマホを使い始めたのは「ロンドンに住む娘からの勧め」だったそう。最初は無料で通話したり好きなアーティストの情報を得たりできるのが、モチベーションの源泉になったとのことです。
「パソコンスキルの習得は難しいと感じる場面もあったのではと想像できるが、その辺りはどう乗り越えたのか?」という大高さんの質問に対し、「自分の好きなことをパソコンやスマホを使ってやってみるのを心がけていた」と⼤崎さんは回答。なんでも、“推し活”を楽しみながら、パソコンスキルを磨いていったとか。「私の推しはBTS。好きなアーティストの動向をネットで追っていました。
個人的に世界で人気になっていることは、自ら調べて『流行に触れたい』という思いが強いんですよ。自分の好奇心があれば、年齢は関係ないと思っています」また⼤崎さんは、もともとミーハーで流行には敏感な性格の持ち主で、新しいことへ挑戦するのも億劫にならないそうです。「自分で好きなものを見つけ、追いかけていくこと。それが人生の楽しみと幸福につながるのではないでしょうか」(⼤崎さん)
「78歳でデジ活を始めて変わったことは?」という大高さんからの問いについては、「今まで知らなかったことでも、ネットを使えばすぐにわかるようになった」と⼤崎さんはコメント。「Twitterは海外のフォロワーさんとも繋がることができ、自分の知らない世界を知るきっかけになる。これは自分にとって、とても素晴らしいことで感動しています」
長生きするに連れ、今後の人生についての不安も増していくわけですが、大崎さんは「好奇心がまさっていれば、不安な気持ちも忘れることができる」と不安との向き合い方について話しました。「Twitterでも、常に自分の幸せを発信していて、フォロワーさんが『90歳の自分の生活を垣間見たくなる』ような、ほっこりする投稿を心がけています。健康維持、ポジティブな心構え、好奇心を持つこと。これらが長生きするために重要な要素だといえるでしょう」
「100年生活カフェ」では、昭和レトロのプリンや具だくさんのたまごサンド、コーヒーなども注文できるので、巣鴨地蔵通り商店街の散策がてら、立ち寄ってみるのもいいかもしれません。