地域によって小学校の2学期が始まる日は違うかもしれませんが、その多くは9月1日のはず。そして夏休みボケで眠気を抱えたまま整列した始業式の後、一気に目を覚ましてくれたのが「防災訓練」だったと記憶している人は少なくないでしょう。そう、9月1日は「防災の日」。そして今年は、その日が制定されるきっかけになった関東大震災から、ちょうど100年を迎えます。
株式会社Hakuhodo DY Matrixのシンクタンク「100年生活者研究所」は、この9月1日の「防災の日」を前に、地域で助け合う「共助」に焦点を当て、生活者の防災意識がどのように人生100年時代の幸せに影響するのか調査しました。その結果、防災に向けた取り組みについて、地域内の協力体制構築に「取り組んでいる・準備できている」と回答したのが1割台にとどまりました。また、100年生活者研究所立ち上げ時の調査で、100歳まで生きたいと考えている人が3割だった結果を踏まえて「100歳まで生きたい」という気持ちへの影響を調べたところ、近隣住民に助けられた/助けた経験がある人は、経験がない人と比べて1.4倍高いことがわかりました。
調査結果詳細
Q1. 防災に関することについて、あなたは取り組めている・準備できていますか?当てはまるものを1つだけお選びください。
→地域の助け合いに関する項目は、「取り組んでいる・準備できている」と回答した人が1割台
「取り組んでいる・準備できている」と回答したのは、「近隣住民といざというときに助け合えるように協力すること」が15.7%、「地域の防災訓練に参加すること」が15.4%と、地域の助け合いを示す項目はどちらも1割台にとどまりました。一方で、「地域のハザードマップを把握すること」は40.2%と最も高く、次いで「避難場所や避難経路を確認すること」が39.5%と、自分で身を守る「自助」の項目は割合が高い傾向にありました。
Q2. あなたは生活の中で近隣住民に助けられた、助けてあげたことはありますか
→近隣住民に助けられた/助けたことがあると回答したのは約2割
「助けられたことがある」人は18.4%、「助けてあげたことがある」人は22.0%でした。
Q3. あなたの地元(今住んでいる場所)について、あなたはどう感じますか?
→近隣住民に助けられた/助けたことがある人の方が、「この街に住んでいて幸せ」と感じる割合が約20ポイント高い
「この街に住んでいて幸せだと思う」という項目に対して、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した割合は、近隣住民に助けられた/助けたことがある人が67.3%でした。助けられたことも助けたこともない人の47.6%と比べ、19.7ポイント高い結果となりました。
Q4. あなたは現在、「身体の健康」「心の健康」「人や社会とのつながり」について、どれくらい満たされていると感じますか
→近隣住民に助けられた/助けたことがある人の方が、各項目の満足度が高い
近隣住民に助けられた/助けた経験の有無別に比較したところ、経験がある人は「人や社会とのつながり」が6.37点(経験なしと比べて1点増)でした。また「身体の健康」が6.24点(経験なしと比べて0.51点増)、「心の健康」が6.52点(経験なしと比べて0.71点増)となり、助けられた/助けた経験がある人は、心身の健康の満足度も高いことがわかりました。
Q5. 人生100年時代において、あなたは100歳まで生きたいと思いますか?
→助けられた/助けた経験のある人は、「100歳まで生きたい」という気持ちが1.4倍高い
近隣住民に助けられた/助けた経験のある人は35.6%が「とてもそう思う」もしくは「ややそう思う」と回答しました。経験がない人と比べ、1.4倍(10ポイント)高くなり、人生100年時代を前向きに捉えていることが判明しました。
【100年生活者調査~防災編~】概要
調査⽬的/生活者の防災意識と人生100年時代の幸福度の関係把握
調査⼿法/インターネットモニター調査
調査期間/2023年6⽉
調査対象者/20〜80代の男⼥728名
本調査結果について、100年生活者研究所研究員 伊藤 幹氏は次のようにコメント。
100年生活者研究所研究員 伊藤 幹氏
「向こう三軒両隣」と、ご近所付き合いが当たり前だった時代は今や昔。現代は近隣住民との交流どころか、お隣さんの顔を見たことがないなんてことが当たり前かもしれません。これを機に少しずつ交流を深めて、お互い有事の時に頼り合える関係を築いておくと心強いのではないでしょうか。
■Hakuhodo DY Matrixについて
Hakuhodo DY Matrixは、「The well-being company」として人々の幸福と健康の増進に役立てることを目指し、博報堂DYホールディングスのグループ会社として2021年4月に創業しました。「100年生活者を見つめ、人生を通してWell-beingであり続けられる理想社会の実現に貢献する」というミッションの下、シンクタンクである100年生活者研究所を通して、人生100年時代の幸せをテーマにした調査リリースを発信・提案しています。
現代社会では、昔に比べて地域住民とのつながりが希薄になっていると指摘されており、それがコロナ禍での外出・行動制限によって加速したように思います。実際、結果詳細で紹介したように防災に向けた取り組みについては、8割以上の方が地域内での協力体制が「取り組んでいない・準備できていない」と回答しています。しかしながら人生100年時代においては、長生きできるようになったからこそ、災害リスクに備える重要性も高まっていると考えています。
本研究では、近隣住民との交流を積極的に行うことで防災における課題を解決するだけでなく、自分自身・地域全体のウェルビーイングが向上したり、人生100年時代を前向きに捉えたりすることが示唆されました。地域のつながりは、防災・ウェルビーイング・人生100年意向を向上させる、まさに「一石三鳥」の解決策です。
そのために、まずは日々の挨拶から始めてみませんか?「いつも」の小さな心がけが、「いつか」あるかもしれない災害時に、きっと大きな力となるはずです。