免疫って育てられる?親たちの“迷い”に見えた食事のヒント

春の新学期が近づく中、子どもの健康に不安を感じている家庭も多いのではないでしょうか。最近は、感染症の流行がニュースでも話題になるほど増えており、「うちの子もまた熱を出した」「保育園から呼び出しがあった」といった声がSNSでも頻繁に見かけられます。体調を崩すたびに仕事を休まざるを得ない保護者の負担も重く、どうすれば子どもが元気に過ごせるのか、悩む声も多く聞かれます。

そんな中、注目されているのが「免疫力」というキーワードです。特に子どもの免疫力をどう育てるかについて関心が高まっており、実際に“健康にアイデア”をスローガンに掲げる明治が実施した調査では、小学校3年生以下の子どもを育てる全国の父母1,000名のうち、約76%が「免疫力を育てたい」と答えた一方で、77%が「どう育てればいいか分からない」と感じていることが明らかになりました。これは、育児に関心の高い家庭でも「情報はあるのに実際に何をすればいいか分からない」というジレンマを抱えていることを意味しています。

そこで今回は、そんな不安を感じる家庭にとってすぐに取り入れやすい「食事の工夫」に注目してみたいと思います。難しい知識や特別な栄養素の話ではなく、日々の食卓にちょっとした工夫を加えるだけで、子どもの健康をサポートするヒントが見えてくるかもしれません。

多くの親が「免疫力を育てたいけれど、方法がわからない」と感じている

子どもの健康を守るために、何を意識していますか?
風邪やインフルエンザ、胃腸炎など、季節ごとに次々と流行する感染症。そのたびに体調を崩すわが子を心配し、「どうすれば元気に過ごせるのだろう」と感じている家庭は少なくないはずです。こうした背景から、最近特に注目されているのが「免疫力」というキーワードです。

実際に行われた調査によると、「子どもの免疫力を育てたい」と考えている親は全体の76.1%にも上ることがわかりました。多くの家庭が、病気に負けない体をつくることの大切さを感じていることがうかがえます。

一方で、その思いを実際の行動に移せているかというと、現実は少し違うようです。同じ調査では、「免疫力の育て方が分からない」と答えた親が77.3%に達していました。関心は高いものの、正しい情報や実践方法がわからず、戸惑っている家庭が多いことが浮き彫りになっています。ネットやSNSでは「免疫に良い食べ物」や「習慣」など様々な情報があふれているものの、どれが本当に正しいのか判断がつかず、不安が募るという声も少なくありません。

では、そんな家庭がすぐに取り入れやすい工夫にはどんなものがあるのでしょうか。注目したいのが、日々の暮らしの中で最も身近な健康習慣——「食事」です。

食事の工夫が“今すぐできる免疫サポート”の第一歩

子どもの免疫力を育てるために、家庭ではどのような食事の工夫が行われているのでしょうか。調査によると、父母が積極的に子どもに食べさせている食品として、最も多く挙がったのは「ヨーグルト」(47%)。続いて「納豆」(36%)、「みそ汁」(33%)が上位を占めました。いずれも、腸内環境を整える発酵食品として知られており、小児科医の回答でも評価が高い食品です。

さらに小児科医の回答では、これらに加えて「緑黄色野菜」(48%)や「青魚」(31%)を挙げる声が多く見られました。これは、発酵食品に加えて、栄養バランスをより意識した食材が医師の間で重視されていることを示しています。

この結果について、小児科医の金子一成先生は「親御さんがヨーグルトやみそ汁、納豆といった発酵食品を選んでいるのは、腸内環境の改善や腸の免疫機能を意識している点で、医学的に見ても正しい認識があると言える」とコメントしています。また、発酵食品と野菜を組み合わせることで“シンバイオティクス”と呼ばれる効果、つまり体に良い菌(プロバイオティクス)と、その菌のエサになる食物繊維(プレバイオティクス)を同時にとることができ、腸の免疫力をより高めることにつながるといいます。

難しい栄養管理や特別な食品に頼らずとも、家庭にある身近な食材で十分に免疫をサポートできるというのは忙しい保護者にとっても、心強いポイントではないでしょうか。まずはいつもの食卓に、発酵食品や野菜を意識的に取り入れてみることから始めてみるのも良いかもしれません。

【調査概要】
調査対象者:
1.感染症を診断する一次医療機関(クリニック等)で過去5年以上診察する全国の小児科医100名
2.低年齢の子ども(小学校3年生以下)を育てる全国の父母1,000名
調査方法:インターネット調査(日本能率協会総合研究所調べ)
調査時期: 2025年3月上旬

免疫力は“育てられる” 家庭でできる生活習慣のヒント

金子一成先生

関西医科大学副学長、医学部長、小児科学講座主任教授

著書:『小児の腸内細菌叢UP-TO-DATE』(編著・日本医事新報社 2024)他 多数

今回の調査監修を務めた小児科医・金子一成先生は、子どもの免疫について次のようにコメントしています。

「免疫とは、体にとって異物であるウイルスや細菌を見分け、排除するための防御システムです。正常に働く免疫は、外からの異物にはしっかり反応し、自分自身には攻撃しないというバランスを保っています。
子どもの免疫力は、段階的に育っていきます。まず5歳頃までに免疫細胞の役割分担が進み、12歳頃までは免疫に関わる臓器が発達することで、免疫の総力が高まります。集団生活を始めたばかりの年齢で感染症にかかりやすいのは、免疫が成長している証でもあるのです。

最近は、清潔な環境や過度な感染予防によって病原体に触れる機会が減り、免疫系の発達に影響が出ているのではないかと懸念しています。免疫には適度な“トレーニング”が必要であり、過保護になりすぎると免疫の働きが未熟なままになってしまう可能性もあります。
日常生活では、睡眠、運動、規則正しい生活を心がけることが基本です。また、食事面では発酵食品と野菜をあわせて摂る“シンバイオティクス”が腸の免疫を活性化するために有効です。さらに、ワクチンの定期接種も確実な免疫強化につながるので、忘れずに受けていただきたいと思います。

免疫力は自然に備わるものではなく、日々の生活の中で少しずつ育てていくものです。親御さんには、完璧を目指すのではなく、できることから気軽に取り入れていくことをおすすめします」

家族みんなで免疫力を育てる “育免”という考え方

免疫力を育てることは、毎日の積み重ねの中にあります。栄養バランスを意識した食事、適度な運動、十分な睡眠、そして規則正しい生活リズム——どれも特別なことではありませんが、忙しい日々の中で継続するのは簡単ではありません。

そんな中で注目されているのが、「育免(いくめん)」という考え方です。これは子育てに積極的な“イクメン”の言葉に、“免疫”の「免」を掛け合わせたもので、子どもの免疫力を育てることを家族みんなで意識していこうという新しい視点です。

食事や生活習慣の工夫は、つい母親に偏りがちになってしまうこともありますが、父親が積極的に関わることで、子ども自身の意識や習慣にも良い影響を与えることが期待されます。例えば一緒に買い物をして発酵食品や野菜を選んだり、朝食を一緒に食べたりするだけでも、子どもにとっては楽しい体験になります。